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【コミックシーモア】現代人を動かすのは“怒り”?「マンガのWEB広告」に見る意外な利便性、電子コミックならではの“タイパ”効果も
広告ヒットも増加、「いじめ」「夫の不倫相手」が怒りの感情を揺さぶる
「当社のオリジナルコミックで、昨年の年間ランキング・青年マンガジャンル2位になった『レンタル・マーダー〜復讐のプロ、お貸しします〜』にもその傾向が見えました。“敵キャラのいじめ描写と、それに対する斬新な復讐手法”という広告クリエイティブが、ユーザーの怒りの感情を揺さぶり、ヒットにつながったと考えています」(山川さん)
『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』(C) 結衣まどか/シーモアコミックス
「本作は浮気した元夫と離婚して仕事に邁進していた主人公のもとに、元夫からやたらポエムチックなメール(=ロミオメール)が届いたことから始まる攻防戦。つまり敵キャラは元夫なので、当初は広告でも元夫のナルシストぶりや気持ち悪さをメインに掲出していました」(シーモアコミックス 第二編集部プロデューサー)
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広告変更前
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広告変更後 『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』(C)結衣まどか/シーモアコミックス
「過去のヒットデータから、女性に嫌われる女性像は読者の怒りの共感を呼びやすいことがわかっていました。そこで30〜40代女性が嫌う女性像を徹底リサーチ。SNSのほか、ネット掲示板も参考にして(笑)。そこで浮かび上がってきたのが、“小ズルく立ち回る若い女性”というキャラクターです。続刊からは元夫を寝とった上に、主人公の今カレも狙う女性の“活躍”を多めに盛り込みました。さらに広告でもその女性を敵キャラとしてメインに掲出したところ、売上が120倍まで伸長したんです」(シーモアコミックス 第二編集部プロデューサー)
データ分析は類似作の量産にならない?「表面的でなく深層的な人間の心の動きを捉える」
「当社には8つのオリジナルレーベルがありますが、制作スタイルは大きく2タイプに分かれます。1つは作家と編集者が二人三脚で面白い作品を目指す従来型の編集部。もう1つは読者レビューも含むビッグデータを分析して作品に落とし込むマーケットイン型の編集部です。もちろん後者の編集部も作家の才能を生かすのが大前提ですが、そこに説得力のあるデータを掛け合わせることでヒットの精度を上げていくという制作スタイルを取っています」(山川さん)
一般にマーケットイン型の商品開発は、同じようなモノが乱立してしまうデメリットがあるとされる。マンガも近年は“異世界”や“令嬢”といったジャンルの量産が指摘されるが──。
「そこには僕らもとても慎重になっています。たしかに、キャラクター像やストーリー展開といった表面的なヒット要素ばかりなぞっていたら、同じような作品ばかりになってしまうかもしれません。データ分析で意識しているのは、もっと深層的な人間の心の動きを捉えることです。特定のジャンルに注力するのではなく、データで捉えた人間の感性の骨格の部分をさまざまなジャンルの作品に投入するという考え方ですね」(山川さん)
しかし、人間の感性には数値化できない定性的な要素もたくさんある。
「おっしゃる通り、定量的なデータばかり見ていたら視野が狭まる恐れもあります。だからこそ、従来型の作家・編集のクリエイティブな閃きを最重視したマンガの制作スタイルも大切にしています。プロダクトアウト型とマーケットイン型、2つのタイプの編集部が常に意見交換をしながら、読者に刺さるマンガ作りを目指せるのが強みだと考えています」(山川さん)
現代的なデータ分析がなかった時代にも、感性を揺さぶる作品は読者の心を捉えてきた。その感性の深層がデータで見えるようになった今、多くのマンガジャンルで刺さる要素が“怒り”だというのは少々気になるが、マンガは時代の写し鏡。ヒットマンガには、現代人の感性の奥底が見え隠れしているのだ。
(文:児玉澄子)
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■『レンタル・マーダー〜復讐のプロ、お貸しします〜』(外部サイト)
■『元夫から「ロミオメール」が届いた件について』(外部サイト)