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chocoZAP事業、急成長の裏で“無人化の壁”に直面…セキュリティ強化と“省人化”の両立は可能か? 瀬戸健社長に聞く
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“年間1000店舗”をたった5人で達成…「非常識さ」をいかに「普通」のマインドでこなせるかが鍵
chocoZAP
瀬戸 健社長 ペースとしては想定内です。22年にグランドオープンした段階で、私は社員に「1年で1000店舗」と公言していました。その際、1000店舗というスケールが世間でどれくらいの規模感なのかを調べたんです。すると、全国の吉野家さんがおよそ1000店舗だったんですね。つまり、「あの吉野家さんを1年程度で追い抜くスピードで出す」ということだったのです。
―― 一見するとなかなかの無謀なペースのようにも聞こえますが(笑)、どのように勝ち筋が見えていたのでしょうか?
瀬戸 健社長 当然、社員の中にも未知の領域ですし、半信半疑な部分もあったと思います。ですが、会議やミニマムテストを重ね、説得力のある数字を出して落とし込んでいく中で、年間1000店舗が“現実的な領域”に達したのです。
RIZAPグループ代表取締役社長 瀬戸健さん(写真/草刈雅之(C)oricon ME inc.)
瀬戸 健社長 仲間たちには本当に感謝の言葉しかないです。確かに数字に関しては「出来る!」という自信が私の中にはありました。ですが、冷静に考えてみると、chocoZAPの店舗開発はたった5人でやっているんですよ。5人で1日3店舗を開発する計算で、1ヵ月で約100店舗、年間で1000店舗。それをたったの5人で回している…はっきり言って無茶ですよね(笑)。
――どう考えても無茶です(笑)。でも、瀬戸さんの熱量にほだされて実現させた。
瀬戸 健社長 “再現性”を前提とした、数字としての根拠はありました。ただ、コストや完成形を見据えつつ、「どれくらいのスピードで成し遂げられるのか?」の根拠は、正直なところ当初は全くなかったんです。そこは本当に、やってみなければ分からない領域でした。
――「ロジカル」と「勢い」、この2つの要素にどのような整合性を持たせたのか。
瀬戸 健社長 私はある意味で、「非常識なこと」掲げますが、自分の中ではそれが「普通」になってしまうのです。逆に皆が「常識」を持ちすぎていると、新しいことは何もできません。そういう意味では、社員たちも既存の枠組みを解体・再構築するような柔軟性を持っています。「今まではこうだったから」という思考に陥った時点で、このビジネスは成立しません。いかに枠組みを壊すことを「面白い」と思えるかどうかなんです。
築き上げた実績をいかに“自己否定”出来るか? 大半の人が願う「現状維持」に再コミット
明るく開放的な「chocoZAP」店舗内
瀬戸 健社長 そうですね、やはり私も事業を展開していて思うのですが、ブランドをより研鑽していくなどの「足し算」は皆できるんです。でも、築き上げたものを失うかもしれない、事業としての損失に繋がるかもしれないという真逆のアプローチにはどうしても「怖さ」を感じてしまうものです。ただ、自分の中で振り返ってみた時、その「足し算」はエゴだったのではないかと感じることがあるんです。RIZAPを立ち上げた時もそうですが、私はトレーナーでもないですし、専門家でもない。専門的な知識がもともとあったわけではないんです。それでもトレーナーたちの前で自信を持って話せるのは、「誰よりもユーザーの気持ちや視点に立てている」という確固たる自信があったからなんです。
「chocoZAP」店舗内
瀬戸 健社長 お客様の立場で考えるという軸は、これまでも、そしてこれからも一切ブレません。RIZAP事業は「結果にコミットする」というコンセプトで、ビジネスパーソンの方などに刺さりました。ゴール設定が好きで、ハードなものを成し遂げた達成感や充実感を求める層です。でも、やればやるほど、自分がユーザーの立場になった際に「こんなハードなことは普通は続かないな…」ということにも気づくわけです。「現状維持でいい」「ある程度のゴール設定でいい」という人たちの方が、世の中には圧倒的に多い。そして、その健康を維持すること自体が実はとても大変なわけですよね。
――全員が“意識高い系”では無いですからね…ハードルが高い分、離脱者も多い。
瀬戸 健社長 そういったマインドのほうが圧倒的多数であることに、ユーザー視点に立ったからこそ気づけたんです。常にユーザーの立場を中心に考えた時に、chocoZAPに凄く大きな可能性と社会的価値があると思えたのです。
「chocoZAP」店舗内
瀬戸 健社長 仰る通りです。「小さな一歩を踏み出すための場所」を作ることにこそ価値があると思ったんです。ですから、これを自己否定と呼ぶのだとしたら、それは我々が「手段が目的化していた」ということだったのだと思います。私はRIZAPのスタート当初から言い続けていたことがあります。それは、「私たちはパーソナルトレーニングや低糖質を広める会社ではない」と。我々の目的は、お客様が一度きりの人生の中で、自分自身に自信を持ち、自分のことを好きになれるための「ベストな手段」を常に考えて提供することなんです。
――アプローチは異なれど、ユーザーに提供する“主目的”は不変ということですね。
瀬戸 健社長 はい。「手段」には全く固執しません。ゴールという「目的」には徹底的に固執しますが、手段はいくらでも変える。それが弊社のプロセスです。
chocoZAP“第2章”突入、無人店舗におけるセキュリティ強化はどうなる?「それでも“省人化”は必要不可欠」
「chocoZAP」女性専用店舗
瀬戸 健社長 それは非常に嬉しいです(笑)。ジムが世の中にとって必要不可欠なものになっていくためには、運動が習慣化していくための「ハードル」をあらゆる面で取り払っていかなければなりません。
――その試みこそが、今期掲げられた“chocoZAP第2章”に紐づいていると思うんです。
瀬戸 健社長 その通りです。金額面もそうですし、物理的な距離の近さ、着替えなければいけないという手間の改善。あるいは心理的に「初心者だから肩身が狭い思いをするのではないか?」といった不安の解消。そのようなハードルをどんどん下げていく必要があります。例えばchocoZAPでも、男性の目を気にして、男性がいない時間帯を狙って利用されている女性のお客様が多いです。先ごろ最大300店舗の女性専用店舗の展開を発表しましたが、まさに「表面的には顕在化していないけれど、世の中でハードルや障害になっている負の部分」を我々が認識し、取り払っていくことが重要だと思っています。
――他方で、無人であるが故に、故意ではなかったとしても、女性専門店舗だと気づかずに男性が入店してしまうようなケースも散見されました。セキュリティ面における課題が浮き彫りになっています。
瀬戸 健社長 はい。セキュリティ強化を最優先事項として取り組むための人的リソースの配分を念頭に、スマホを見るかのように生活とシームレスに繋がり、気軽に簡単にジムに行く環境を作っていくのが喫緊の取り組みです。
2026年3月期決算説明会資料 P48より(2026年5月14日発表)
瀬戸 健社長 そもそも日本は「ゼロリスク信仰」が強い国です。例えば自動運転にしても、なかなか試験運転すら進まない現状があります。何かひとつ問題が起こると、そこばかりがクローズアップされてストップしてしまう。しかし、これからの高齢化社会や人手不足を考えた時に、自動運転や無人化を通した「省人化」は必要不可欠です。
――少子化の今、社会課題としても避けては通れない取り組みですね。
瀬戸 健社長 我々の店舗も無人運営ですから、想定外のことは当然起こります。その結果、お客様に不快な思いやご迷惑をおかけすることもあります。ですが、それを恐れて「やっぱり有人にしよう」と戻してしまうと、結果的に人件費などのコストがお客様の利用料金に跳ね返ってしまいます。だからこそ、何としてもこの無人運営とAIマネジメントの形を成立させたいという強い思いで、これまでずっとやってきましたし、今後も更に強化していきたい思いが強いです。
無人店舗=人材の軽視なのか?「慣れ親しんだ手段から離れ、サポートすることこそ本当の愛情」
RIZAPグループ代表取締役社長 瀬戸健さん(写真/草刈雅之(C)oricon ME inc.)
瀬戸 健社長 私は、企業として「人が活躍できる場を提供すること」が命題だと考えます。人が活躍できるというのは、お客様から必要とされて自分の仕事ができるということです。冷静にビジネス構造を見た時に、「儲からない事業」というのは、厳しい言い方をすれば「今はお客様から必要とされていない事業」をやっているということになります。お客様から必要とされていなければ、これは新たな構造を再構築しなければなりません。ですから、人が一番活躍できる環境を考えた時に、やはり「お客様から必要とされていて、しっかり利益が出る事業」であるべきで、この現実を冷静に見極めなければなりません。
――企業は“生き物”であるからこそ、変化や成長を前提とした正しい判断が求められる。
瀬戸 健社長 先ほども言いましたが、人はどうしても目の前のことや、これまでやってきた「慣れ親しんだ手段」から離れづらいものです。ですが、長い目で見た時に、今やっていることを少しシフトした方が社員の生涯年収やキャリアが上がるのだとしたら、会社がそれを導き、勇気を出して一歩踏み出してもらうサポートをすることこそ、本当の愛情だと私は確信しています。
――欧米的な合理主義を突き詰めていった方がある意味で、企業としては楽ですよね。でも、そこは敢えて抗う気構えだと。
瀬戸 健社長 コロナ禍の時もそうでしたが、企業としては、社員の“食い扶持”を何としても作っていかなければなりません。それは企業の絶対的な責任だと思うのです。「自分たちにはこの事業しかない」としがみつくのは、ある種の無責任であり、ただの自己満足になってしまいます。社員を守るためにも、コロナ禍のような危機的状況では、全く異なる事業に挑戦してでも生き残る。生き残るということは、毎月しっかりサラリーを支払うということです。そうした責任を果たしてこその事業経営です。
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