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SUPER EIGHT安田章大、「嘘をつかない」「こなさない」 作品づくりで貫くブレない仕事論

映画『平行と垂直』に主演する安田章大(SUPER EIGHT)撮影:山ア美蔓 (C)ORICON NewS inc.

映画『平行と垂直』に主演する安田章大(SUPER EIGHT)撮影:山ア美蔓 (C)ORICON NewS inc.

 5人組グループ・SUPER EIGHTの安田章大と俳優・のんがダブル主演を務める映画『平行と垂直』が8月28日から公開される。初めて企画から参加し、自閉スペクトラム症(ASD)の兄・大貴を演じた安田に話を聞くと、多くのスタッフやキャストを巻き込んだ制作過程を通じての気づき、安田が普段から大切にしている仕事に対する姿勢、そして作品へ込めた想い…柔らかな言葉の内にブレない真摯さを感じるインタビューとなった。

 今作は安田が劇団ふくふくやを主宰し俳優としても活躍する山野海氏のオリジナル脚本に感銘を受け、旧知の佐藤現プロデューサーに持ち込んだことから企画が始動した。そこに企画に共鳴した小林聖太郎監督も加わりASDの専門家に監修を仰ぎながら約2年をかけて脚本を練り、企画の実現にこぎつけた。

 現在は清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送っている兄の大貴と、カウンセラーとして働きながら兄を支えて生きてきた妹の希(のん)。2人の生活は変わることなく続くと思っていたが、希の結婚話をきっかけに、お互いのこれからに向き合うことになる。それは、2人のこれまでに向き合うことでもあった――。

■のんと築いた兄妹の関係性 少しずつ会話を重ね「愛情だけでない愛憎を表現できたら」

――まず、山野海さんとこの企画が始まった経緯を教えてください。

海さんとは『あとはご自由に』というレギュラー番組でご一緒しました。池田鉄洋さんの出演回で、海さんが演出助手として来られていたんです。番組では、収録後に演出助手が気になったメンバーを1人選び、YouTubeで対談する企画がありました。そこで、海さんが僕を選んでくださって、初めてお話ししました。そのとき、「どうしてそんなに間を怖がらないんですか」と聞かれたので、「逆に、なぜ間が怖いんですか」と返したんです。

僕は、言葉そのものにはそれほど説得力はないと思っています。人間は言葉で嘘もつきますし、言葉を使うようになったのはある意味で退化でもあると考えています。演劇も、お客様と一緒に渦を巻くようにてっぺんにあがって作品が出来上がっていくものだという話をしたところ、お互いに共鳴する部分がありました。

その中で、海さんから「一緒に作りたい作品がある」と言っていただき、「じゃあ作ろう」と。その場限りの約束にはせず、すぐに連絡先を交換して翌日に電話をしました。「構想だけじゃなくて、全部台本を書いて!」とお願いしたところ、約1ヶ月後には本当に書き上げてくださったんです。

そして、完成した脚本をどう形にするか考え、「相談したい人がいる」と連絡を取り、そこから今の流れにつながりました。

――舞台ではなく、映画という形になった理由は何だったのでしょうか。

最初はショートムービーを作ろうという話だったんです。海さんからも「ショートムービーで何か作れたらいいですね」と提案していただいていました。ただ、実際に脚本を書いていただくと、1時間半くらいの作品になる内容だったので、それならショートムービーではなく、きちんと映画にしようという話になりました。

――完成した脚本を読んだ第一印象はいかがでしたか。

「言葉には意味がない」という感覚は、脚本を読んだときにも強く感じました。言葉そのものよりも、目の奥にある言葉や表情、しぐさ、空気、匂いなど、言葉にならない言語がたくさん描かれている作品だと感じました。のんちゃんが演じる希のセリフにあるように、「その人の心の声を知りたい」と感じられる作品でした。そこからみんなで話し合いを重ね、今の作品へとつながっていったのだと思います。

――のんさんとのやり取りがとても自然で、本当の兄妹のように感じられました。現場ではどのように役を作っていったのでしょうか。

打ち合わせは特にしていません。のんちゃんは脚本をしっかり読み込み、自分が感じたことを希として表現してくれました。それに対して僕が芝居を返し、さらにその反応を受けてのんちゃんが返してくれる。そのラリーの積み重ねだったと思います。そこへ聖太郎さんが、「ここはもう少しこうした方がいい」と演出を加えてくださる形でした。

のんちゃんは音楽も好きで、ギターも弾きますし、パンクやハードロックなど、自分が好きなものをしっかり持っている人です。

演技に対しても、自分が大切にしたいこと、芯についてを監督と話し合いながら臨んでいました。そういう姿勢を信頼していましたし、自分も思ったことをぶつければ、きちんと反応してくれると感じていました。

だから、言葉で話し合う時間よりも、芝居を通してキャラクター同士が対話する時間のほうが多かったですね。

――役の背景や人物像について、お2人で話し合うことはありましたか。

したっけなぁ…。ただ、「思ったことや感じたことがあれば、いつでも聞かせてほしい」とは伝えていました。それはキャラクター同士という意味でもありますし、人と人としてのコミュニケーションという意味でもあります。

少しずつ会話を重ねていくことで、兄妹としての見えない絆や距離感は自然と生まれてくると思っていました。そういう積み重ねは、表現にも勝手に表れるものだと僕は思っています。

それは舞台で学んできたことでもあります。兄妹としての愛憎、愛情だけでない愛憎を表現できたら、その関係性を丁寧に届けられたらいいなと思っていました。

――クランクインが物語の後半のシーンだったそうですね。

そうなんです。最初は、僕が駅で携帯電話を持って立っていて、そこに希が「なんで待ってるねん」とやってくる場面の撮影でした。その撮影の待ち時間も座って雑談をしていました。

僕は普段から何でも話す性格なので(笑)、作品とは直接関係のないこともたくさん話していました。そうやって関係性が築けたらいいなと思っていたんです。のんちゃんからは、「どうしてこの作品を作ろうと思ったんですか」と聞かれました。そこで、自分の思いを伝えたりもしました。

――のんさんご自身も作品について意見を出されていたのでしょうか。

はい。例えば、登場人物の頬に触れる場面など、のんちゃんから提案してくれたこともありました。作品全体についても、自分の考えをしっかり持って参加してくれていたので、その姿勢がとてもうれしかったですね。

■ASDの方との交流を通じて得た気づき「僕たちのほうが距離を置いて考え過ぎているのではないか」

映画『平行と垂直』に主演する安田章大(SUPER EIGHT)撮影:山ア美蔓 (C)ORICON NewS inc.

映画『平行と垂直』に主演する安田章大(SUPER EIGHT)撮影:山ア美蔓 (C)ORICON NewS inc.

――映画出演は3年ぶりになります。主演、そして企画から携わった作品でもありますが、今のお気持ちを聞かせてください。

前回映画に出演したときも、映画館まで足を運んでくださる方がいることの喜びを強く感じました。家ではなく、映画館という空間で作品に集中して観てくださる。そのこと自体が本当にうれしかったです。

今回も、この作品をきっかけに多くの方へ広がっていってほしいと思っています。良い作品を作るだけでは、広がらなければ何も意味がないと感じるんです。映画を作り、広がり、多くの方に届き、心が動き、その人の人生に何か変化を与えられて初めて意味があると思っています。

映画に出演できる喜びももちろんありますが、その先に作品が広がっていくことこそ、映画ならではの魅力だと感じています。伝播力が強いのかもしれません。

もちろんテレビドラマにはテレビドラマの良さがありますが、映画館という環境だからこそ、より深く作品が届く力もあるのではないかと思っています。

――役を演じるにあたり、障害のある方々への理解を深めながら向き合われたのでしょうか。

もちろんです。この役には真剣に向き合う必要が絶対にありましたし、そのための環境はスタッフの皆さんが協力してくださったからこそです。

ただ、僕の中では「障害がある」という言葉によって、その人への見方が変わってしまうことに違和感があります。

もちろん事実として障害はあるかもしれません。でも、それ以上に“その人自身を時間をかけて見守ろうよ”とか、寛容に受け取る必要があるのではないかと思います。それは僕たち自身も、日頃から周囲に寛容に受け止めてもらって生きていることが大前提にある。僕自身もむげに扱いたくはなかった。誇張して扱う作品もあるかもしれないけれど、この作品は細かな背景まで丁寧に話し合いながら、多くのスタッフの皆さんと時間をかけて作品を作りました。僕はその皆さんを「アベンジャーズ」と呼んでいるんです(笑)。

また、「さくらんぼ教室」の皆さんとも交流させていただきました。皆さん本当に温かく迎えてくださり、一つひとつ丁寧に説明してくださいました。

むしろ僕たちのほうが距離を置いて考え過ぎているのではないか、と感じるほどでした。この作品を通して、日本、そして世界でASDと呼ばれる方々への見方や考え方を、より深く知っていただくきっかけになればうれしいです。その思いで、一生懸命向き合いました。

――作品を拝見して、お2人の兄妹愛に心を打たれました。この兄妹の関係性をどのように捉えて演じられましたか。

この作品は、本当に微々たる成長を描いた映画です。のんちゃん演じる希は、子どもの頃から兄のことをすべて受け入れきれなかった部分があったと思います。一方で、大貴も障害がある中で、自分の感情をうまく表現できない部分や、自分でも分かっていないことがあります。そうした姿が描かれている作品ではありますが、定型発達か、障害があるかどうかはあまり関係ないと思っています。

みんな同じような感じですよね。きょうだいも家族も、みんな表現の仕方や伝わり方が違うだけです。街で定型発達の人同士が話しているのを聞いてみても「全然理解し合えていないな」と思うことはよくあります。

だから僕は、この兄妹を特別な存在としてではなく、ごく当たり前の景色として見ていました。

――改めて作品では「普通」という言葉について考えさせられました。安田さんご自身は、「普通」という言葉についてどのように考えていますか。

自分が良ければ、それでいいと思っています。もちろん法律を破ることはいけませんし、それは守るべきです。ただ、その法律や常識も、本当にそれでいいのかと思うことはありますし、法律は守るという前提の上で、自分にとっての「普通」は、誰かにとっての「異常」でもあるということです。

だから誰かに「おかしい」と言われても、「そう思うなら、それで構いません」と思います。あなたの考えと僕の考えは絶対違う。でも、その中で、たまたま言葉や感情が重なり、お互いを理解していく道ができていくのだと思います。

――「普通」の違いによって摩擦が生まれることを怖いとは思いませんか。

だからこそ摩擦が起きないように、ちゃんと会話をすればいいと思っています。相手が何を伝えたいのか、時間をかけて待つこと。そして、相手が話しやすい空気を受け手が作ること。大切なのは、摩擦を避けることではなく、会話をすることが必要なのではないでしょうか。それが心的安全性だと思っています。

お互いが安心して話せる場を作ることが大事なんだと思います。

■作品作りの難しさ、やりがいを実感「これからも携わっていきたい」

映画『平行と垂直』に主演する安田章大(SUPER EIGHT)撮影:山ア美蔓 (C)ORICON NewS inc.

映画『平行と垂直』に主演する安田章大(SUPER EIGHT)撮影:山ア美蔓 (C)ORICON NewS inc.

――今回、改めて、作品を作るという仕事そのものに対して、新たに感じた、難しさややりがいなどはありましたか。

まず、大人の皆さんが本当に頑張ってくださっていることへのありがたさを強く感じました。もちろん僕も大人ですが、自分より年上の方々が一生懸命支えてくださっていることを改めて実感しましたよ(笑)。

作品は、自分一人では絶対に作れません。すべての部署の皆さんがいてくれるから作品が完成するんです。

今の時代にオリジナル作品に挑戦すること、しかも、この作品は扱うテーマも難しい。少し方向性を間違えるだけで、伝わり方が大きく変わってしまいます。

だから、作品を作ることの難しさを改めて感じました。でも、難しいからこそやりがいがありますし、面白さもあると思います。

普段から舞台でも、キャスティングや演出家、プロデューサーの方々と作品について話し合うことがあります。制作に関わることで作品への愛情はさらに深まりますし、その分、悩みも増えます。

それでも、やる価値がありますし、これからも携わっていきたいと思っています。

――多くの方が力を貸してくださるのは、安田さんのお人柄も大きいのではないでしょうか。人と一緒に仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

それは周りの皆さんに聞いていただいたほうがいいですね(笑)。

でも、在り方として、大切にしているのは、嘘をつかないこと。そして、作品に関わる皆さんには、集客率や視聴率など数字のことも、予算のことも、小さなトラブルも含めて、全部教えてほしいと伝えています。

もちろん、大人の事情で話せないこともあります。それでも、掘るようにしています。時には「そこまで首を突っ込まないでください」と煙たがられることもあります。それでも、知らせてください、と話させていただいています。そういう姿勢を煙たがらず、ウェルカムでいてくださる皆さんがすごい、と僕は思っています。

――今回、出演だけではなく企画から携わられています。日頃からさまざまな現場で活躍されていますが、安田さんが考える「プロの仕事」とは何でしょうか。

どんな仕事でも、慣れてくると「自分はできている」と勘違いしてしまいます。その先にあるのが、「こなす」という状態です。そして、こなしていることをちゃんと仕事ができていることだと勘違いしてしまう。そういう悪循環が続くと、自分がその状態に陥っていることにも気づけなくなります。

だから、まず「こなさないこと」が大切です。そして、一生懸命であることを忘れないこと。一生懸命やっている人の背中は、必ず誰かが見ています。

あとはちゃんと行動に起こす。人は言葉で尊敬することもありますが、実際には行動や背中を見て学び、ついていくことの方が多いと思います。人間以外の動物も親の背中を見て育っていきますよね。それと同じように、背中で示すことが大切だと思っています。だから、「こなさない」ということを、とても大事にしています。

――行動を起こしてきたからこそこの作品があるのだと思います。その“こなさないこと”が大切だという考え方に至ったきっかけはありましたか。

自分の場合は病気がきっかけだったと思います。ただ…病気とは関係なく、気づくタイミングはあると思っています。

自分の中に謎の渦まきがでてきているとき、説明できないモヤモヤとした感情が生まれたとき、それは感謝を忘れていたり、何かをこなしてしまっていたりするサインなのではないかと思います。

生きることさえ当たり前になってしまうと、それも「こなしている」状態になります。だからこそ、自分自身でその状態に気づかなくてはいけない。そういう意味ではASDの方など、言葉で伝えることが苦手だったり、表現の仕方が違ったりする方もいますが、それぞれが自分なりの答えを持ち、一生懸命伝えようとしています。それは僕たちと何も変わりません。だから、自分にはまだ分からないことを探し続けることが、こなさないことへの、一番の近道なのではないかと思いますね。

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