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(更新: オリコンニュース

終わらない宗教2世の苦悩「離れても別の生きづらさ襲ってくる」“宗教虐待”の実態

 これは宗教による児童虐待だ──。特定の信仰を持つ親のもとで育てられた宗教2世たちが声を上げ始めている。旧統一教会の信者を親に持つ小川さゆりさん(仮名)もその1人。『小川さゆり、宗教2世』(小学館)には教団の驚くべき実態とともに、貧困やいじめ、両親の愛への渇望など宗教2世ゆえの苦悩が赤裸々に綴られている。旧統一教会の問題を顔出しで訴えることで教団から攻撃され、世間からは偏見の目で見られながらも、小川さんが活動を諦めない理由とは。

裏切られても親を信じたい…教団を離れたことで生じた新たな葛藤

 3月29日、宗教2世たちが会見を行い「子どもへの“宗教虐待”について法律に明記してほしい」と訴えた。宗教虐待とはいかなるものなのか。会見で発言した小川さゆりさん(仮名)は「信仰を理由にした心理的、身体的、経済的な虐待。また進学や娯楽、交友関係の厳しい制限といった子どもの人権侵害も多く含まれます」と語った。

 小川さゆりさんと言えば、昨年10月7日に行われた日本外国特派員協会の記者会見を目にした人も多いだろう。旧統一教会の実態と被害者の救済を訴えた会見の途中、突然、両親から会見中止を求めるファックスが舞い込み、心をかき乱される様子は今もYouTubeに上がっている。

「もともと両親は、私が教団を離れたあと、『あなたには申し訳ないことをしてきた』と言ってくれていたんです。私が公の場に出て被害を訴えるようになってから、突然否定し始めました。両親たちの意思だけとは、思えません」
 裏切られてもなお親を信じたい。そんな苦しい胸の内を明かしてくれた小川さんは、1歳になったばかりの息子の母親でもある。

「顔出しで問題を訴えるようになってから、毎日のように『嘘つき』『被害者ビジネス』と誹謗中傷されてきました。教団内部にいたときも苦しさはあったのに、離れてからはまた別の生きづらさが襲ってきて、死にたくなることもあります。だけどこの子を置いてはいけない。無償の愛を注いでくれるこの子の存在は、活動を続ける大きな原動力になっています」

「教義がどうあれ、ただの1人の娘として向き合い、抱きしめて欲しかった」

 小川さんは両親が旧統一教会の合同結婚式で結ばれ、その家庭で生まれた“神の子”として教団内で特別な存在として扱われていた。

「家庭はいつもお金がなく、洋服は誰かからもらったお下がりばかり。学校では『あの家は貧乏』『キモい』『臭い』とバカにされ、部活では身体的ないじめを受けたこともありました。親に相談しても『神の子はサタンに狙われやすい』『神の子は神様が期待しているからこそ愛の試練を与えているんだ』と教義的に解釈されるだけでした…」

 いじめを我慢していた小川さんは、親に訴えることで何かしらの解決を求めていたわけではなかった。

「教義がどうあれ、ただの1人の娘として向き合い、抱きしめて欲しかったんです」

 3人きょうだいの末っ子として育った小川さんだが、母親はその下に3人の妹を出産している。旧統一教会には神の子を生んで家庭を完成させる「子女繁殖」という教えがあり、妹たちは子どもを授からなかった信者家庭に養子縁組されたという。
「2番目の妹には一度だけ会いに行ったことがあります。養父母さんたちはとても優しそうで、妹もまじめで優しそうな子でした。一人っ子として大切に愛されて育ったのであろう雰囲気が伝わってきましたね」

 信仰との向き合い方は家庭によってさまざまで、“宗教虐待”を受けたと思っていない2世信者もいる。そのことを認めた上で、小川さんは「子どもは信仰を選ぶことができない」こと自体が問題だと訴えている。

「旧統一教会が問題のある団体であることは少しずつ知れ渡っています。私のように自ら離れようとする子どももいるでしょう。だけど物心つく前から受け付けられた価値観は根深く心を支配し続けます。神の子として生まれ育ってきた20年間を否定することは自分の存在そのものを否定すること。頭では『そんなの変だ』とわかっていても、いつまでも自分を認められないでいるのが苦しくてたまりません」

被害者救済法案への課題と期待「教団から離れた子どもたちを偏見なく受容する社会になってほしい」

 マンガやアニメ、ゲーム、アイドルといった子どもらしい楽しみを制限する宗教も多い。音楽好きの小川さんもJ-POPのラブソングを口ずさむと「サタンが作った歌だ」と怒られた。

「旧統一教会では自由恋愛を罪としており、特に神の子がその血を汚すことは一般人が堕落するよりも罪。『地獄の底に行く』と教えられたこともありました」

 同級生との間でいづらさ感じていった小川さんは、安心できる居場所としてますます宗教にのめり込んでいった。ところが高3で参加した教団のセミナーで男性スタッフからセクハラを受け、精神のバランスを崩す。

「結婚前に異性と接触するのは罪だと教えられてきたのになぜ──と混乱してしまいました。ところが教団や家族に相談したところ『私に霊が憑いている』ということにされてしまったんです」
 著書『小川さゆり、宗教2世』には、霊媒師と称する教団の女性から除霊を受ける場面も綴られている。その描写は壮絶の一言で、現在も小川さんを苦しめるトラウマの1つとなっている。

「私が宗教にのめり込んでいったのは、両親に認めてもらいたかったことも大きいです。真面目に信仰していれば褒めてもらえましたから。だけど脱会して、自分を肯定していたものが無くなり、心が不安定になりました。今、私にとって息子は無条件に愛おしい存在。『才能があるから』と言って思想を押し付けず、そのままのこの子を愛してあげたい。私が持てなかった自己肯定感をこの子には持って成長してもらいたいんです」

 昨年10月、小川さんが勇気を奮って臨んだ日本外国特派員協会の記者会見をきっかけに、高額寄付被害を救済・防止する法案が異例のスピードで成立された。しかし同法案には「子どもへの宗教虐待」の観点が欠けている。

「どんな教義であっても、それは人や国が口出しできることではないし、信仰の自由があると思います。なので、両親の信仰に対しては、何も言えません。

 また、宗教それ自体を批判するつもりもありません。むしろ安心して宗教を信じられる社会であってほしいとは思います。ただ、宗教によって苦しめられている子どもたちが生まれることは絶対にあってはならない。そのためには法整備などが必要です。教団に関わりのない方々にも、どうか『自分には関係ないこと』と思わないでいただきたいです。教団から離れた子どもたちを偏見なく受け入れてくれる社会であることを願っています」
(取材・文/児玉澄子)

小川さゆり、宗教2世(小学館)

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