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終わらない宗教2世の苦悩「離れても別の生きづらさ襲ってくる」“宗教虐待”の実態
裏切られても親を信じたい…教団を離れたことで生じた新たな葛藤
小川さゆりさんと言えば、昨年10月7日に行われた日本外国特派員協会の記者会見を目にした人も多いだろう。旧統一教会の実態と被害者の救済を訴えた会見の途中、突然、両親から会見中止を求めるファックスが舞い込み、心をかき乱される様子は今もYouTubeに上がっている。
「もともと両親は、私が教団を離れたあと、『あなたには申し訳ないことをしてきた』と言ってくれていたんです。私が公の場に出て被害を訴えるようになってから、突然否定し始めました。両親たちの意思だけとは、思えません」
「顔出しで問題を訴えるようになってから、毎日のように『嘘つき』『被害者ビジネス』と誹謗中傷されてきました。教団内部にいたときも苦しさはあったのに、離れてからはまた別の生きづらさが襲ってきて、死にたくなることもあります。だけどこの子を置いてはいけない。無償の愛を注いでくれるこの子の存在は、活動を続ける大きな原動力になっています」
「教義がどうあれ、ただの1人の娘として向き合い、抱きしめて欲しかった」
「家庭はいつもお金がなく、洋服は誰かからもらったお下がりばかり。学校では『あの家は貧乏』『キモい』『臭い』とバカにされ、部活では身体的ないじめを受けたこともありました。親に相談しても『神の子はサタンに狙われやすい』『神の子は神様が期待しているからこそ愛の試練を与えているんだ』と教義的に解釈されるだけでした…」
いじめを我慢していた小川さんは、親に訴えることで何かしらの解決を求めていたわけではなかった。
「教義がどうあれ、ただの1人の娘として向き合い、抱きしめて欲しかったんです」
3人きょうだいの末っ子として育った小川さんだが、母親はその下に3人の妹を出産している。旧統一教会には神の子を生んで家庭を完成させる「子女繁殖」という教えがあり、妹たちは子どもを授からなかった信者家庭に養子縁組されたという。
信仰との向き合い方は家庭によってさまざまで、“宗教虐待”を受けたと思っていない2世信者もいる。そのことを認めた上で、小川さんは「子どもは信仰を選ぶことができない」こと自体が問題だと訴えている。
「旧統一教会が問題のある団体であることは少しずつ知れ渡っています。私のように自ら離れようとする子どももいるでしょう。だけど物心つく前から受け付けられた価値観は根深く心を支配し続けます。神の子として生まれ育ってきた20年間を否定することは自分の存在そのものを否定すること。頭では『そんなの変だ』とわかっていても、いつまでも自分を認められないでいるのが苦しくてたまりません」
被害者救済法案への課題と期待「教団から離れた子どもたちを偏見なく受容する社会になってほしい」
「旧統一教会では自由恋愛を罪としており、特に神の子がその血を汚すことは一般人が堕落するよりも罪。『地獄の底に行く』と教えられたこともありました」
同級生との間でいづらさ感じていった小川さんは、安心できる居場所としてますます宗教にのめり込んでいった。ところが高3で参加した教団のセミナーで男性スタッフからセクハラを受け、精神のバランスを崩す。
「結婚前に異性と接触するのは罪だと教えられてきたのになぜ──と混乱してしまいました。ところが教団や家族に相談したところ『私に霊が憑いている』ということにされてしまったんです」
「私が宗教にのめり込んでいったのは、両親に認めてもらいたかったことも大きいです。真面目に信仰していれば褒めてもらえましたから。だけど脱会して、自分を肯定していたものが無くなり、心が不安定になりました。今、私にとって息子は無条件に愛おしい存在。『才能があるから』と言って思想を押し付けず、そのままのこの子を愛してあげたい。私が持てなかった自己肯定感をこの子には持って成長してもらいたいんです」
昨年10月、小川さんが勇気を奮って臨んだ日本外国特派員協会の記者会見をきっかけに、高額寄付被害を救済・防止する法案が異例のスピードで成立された。しかし同法案には「子どもへの宗教虐待」の観点が欠けている。
「どんな教義であっても、それは人や国が口出しできることではないし、信仰の自由があると思います。なので、両親の信仰に対しては、何も言えません。
また、宗教それ自体を批判するつもりもありません。むしろ安心して宗教を信じられる社会であってほしいとは思います。ただ、宗教によって苦しめられている子どもたちが生まれることは絶対にあってはならない。そのためには法整備などが必要です。教団に関わりのない方々にも、どうか『自分には関係ないこと』と思わないでいただきたいです。教団から離れた子どもたちを偏見なく受け入れてくれる社会であることを願っています」
(取材・文/児玉澄子)
小川さゆり、宗教2世(小学館)
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