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『銀河の一票』佐野亜裕美P×浜野謙太が語る主題歌「おーへい」誕生秘話 最終回に込めた思い

 主演の黒木華とバディ役の野呂佳代によるカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜)が、いよいよクライマックスを迎える。政界を追われた秘書・茉莉(黒木)とスナックのママ・あかり(野呂)という異色のバディが奔走する姿は、閉塞感漂う現代を生きる人々の心を打つ。物語の熱量を押し上げているのは坂東祐大による劇中音楽と、浜野謙太が担当する主題歌「おーへい」。ドラマのオープニングを彩る熱量あふれるファンクは、いかにして生まれたのか。最終回を前に佐野亜裕美プロデューサーと浜野にその誕生秘話と最終回に込めた思いを聞いた。

浜野謙太と後藤真希のレコーディングの様子

浜野謙太と後藤真希のレコーディングの様子

佐野亜裕美Pが明かす音楽オファーの意外な事実とオープニングへのこだわり

――ドラマが最終回に向けて盛り上がる中、オリジナル・サウンドトラックが発売されました。佐野さんはこれまでにも『大豆田とわ子と三人の元夫』『17才の帝国』などで坂東祐大さんとタッグを組まれていますが、今回の劇中音楽を坂東さんにオファーした経緯を教えてください。
  • 佐野亜裕美プロデューサー

    佐野亜裕美プロデューサー

佐野亜裕美プロデューサー/以下、佐野坂東さんとは2作ご一緒して、プライベートでも家族ぐるみでお付き合いをさせていただいていることもあり、最初は相談相手としてお話を聞いてもらっていました。第1話の脚本をお渡しして自分のイメージする音楽の方向性を伝えてやりとりを重ねるうちに、坂東さんが「僕がやるしかないと思います」と言ってくださいました。狙っていたわけではありませんが、どこかで坂東さんが担当してくれたらとは思っていたかもしれません(笑)。

――サントラには主題歌「おーへい」も収録されています。どのようなイメージで決めていかれたのでしょうか。

佐野エピソードの最後に「都知事選まであと●日」というテロップを毎回出したくて、その後に本編と軸が異なるエンディング映像や曲が流れると、観ている方の熱量をそいでしまうかなと思い、オープニングに主題歌を置こうと思いました。

――実際にどのような流れだったのでしょうか。

佐野オープニング(映像で主題歌を流すこと)はやったことがなかったのですが、これからドラマを見るワクワク感や、ある種の“景気の良さ”みたいなものがほしくて、どんなジャンルが合うのか、坂東さんとかなり話し合いました。方向性を決めきれない中、劇中音楽のメインテーマの録音現場を訪れた際、その音がものすごく分厚かったんです。もはや「本編のどこで使えるだろうか?」と心配になるほどのパワー(笑)。思わず「これがオープニングだったかもしれませんね」みたいなことを話したら、数日後に坂東さんからそのテーマをファンクにアレンジしたデモが送られてきました。デモを聴いた瞬間に「これだ!」となりました。

主題歌は「浜野謙太しかいない」 劇中音楽のメインテーマが剛速球のファンクに変貌を遂げるまで

――作詞を含め、浜野さんにお願いすることになった決め手は何でしょうか。

佐野ファンクとなったらもう一択で、日本でこの曲に歌を載せてもらうとしたら浜野さんしかいません。そこまでたどり着くのに時間を費やしたため、タイミング的にもギリギリだったのでダメ元でお願いしたところご快諾いただけました。主題歌の方向性がなかなか決まらず苦労しましたが、悩み続けていたのはここにたどり着くためだったのだなと思いました。

――浜野さんはオファーを受けた際、どのような心境でしたか。

浜野謙太/以下、浜野佐野さんが手がける作品はどれも大好きだったので、本当はお芝居の方で出たいなという思いもあったのですけれど(笑)。ご一緒できるのであればということで、二つ返事でお受けしました。

浜野謙太

浜野謙太

――作詞するにあたり「悔しい。ほど本当あっという間に書けたんです。」とコメントを出されていました。改めてその要因は何だと思われますか。

浜野脚本を読んだときに強烈なパワーを感じました。音楽をはじめ表現する上ではどこにパワーがあるかが大事だと思います。僕はブラックミュージックが好きなのですが、ブラックミュージックは社会に対して抗議したり、声を上げてきた文脈があります。敬愛するジェームス・ブラウンのように音楽で訴えかけ、行動に移すというパワーを現在の日本に置き換えるのは難しいなと思っていました。どんな詞を書けばいいか悩みながら脚本を読んだら、その答えのようなものがあり、ここにパワーがあったのかというのがわかりました。自分のバンドでは苦しむのに、今回の脚本で一気に何かが繋がってスラスラ歌詞が浮かんできたのは悔しかったですね。

――脚本の中に“答え”があったとのことですが、歌詞を綴る上で核になったのは?

浜野不思議な体験なのですがパワーがみなぎってきました。ドラマは女性2人が主人公ですけど、僕は男性であり中年であり結婚していて子どももいるいわば強者サイド、権力サイドなので、音楽に乗せて何か社会に訴えかける歌詞などないのではと思ってしまいます。音楽としての出自がブラックミュージックで、あのパワーに魅了されてやっていますが、日本で同じようなフレーズで立ち上がれみたいなことを僕が言っても空振ったり、暴力的になってしまうのではと常日頃から感じています。

――その思いが今作の脚本を足がかりに解放されたのでしょうか。

浜野脚本の中に権力に相対する女性二人がいて、それがとてもリアルだし、しかも共感できる。そこにパワーの源泉があったのかなと気づかされ感動しました。僕が、敵を粉砕する! みたいな気持ちで書いた歌詞が、世界観として合っているのかわかりませんが、とにかくもうジャンヌ・ダルクなんだ! ぐらいのつもりで書きました。

浜野謙太が脚本から受け取った、現代日本に響く“声を上げるパワー”

  • 「おーへい」ジャケット

    「おーへい」ジャケット

――主題歌で使われている「おうへい」は漢字にすると「横柄」が思い浮かびますが、あえて平仮名表記にしたことは、さまざまな意図が込められているのではないかと思います。どの部分から書き始められたのでしょうか。

浜野「おうへい」からですね。最初にテーマが決まっちゃえばそこに向かっていく感じなので、Aメロがカッコよくなりすぎちゃうこともあります(苦笑)。今回もそうで、「おうへい」の語呂がいいから始まり、歌詞の世界を掘って行くと「そういうことが言いたかったのか」みたいなゾーンに入りました。自分の中での旅があるということなんでしょうかね。

――平仮名表記だからこそ、また耳で聴いたときにこそ、漢字の「横柄」と「オーヘイ!」と呼びかけられている印象も受けます。

浜野実は大した理由はありません(笑)。おーへいは「横柄」なので。なぜかキャッチーな掛け声みたいになっていたら面白いし、漢字だと殺伐とした雰囲気になっちゃうので。世の常だと思うのですが、何か新しいものやことを作ろうとする人って横柄と言われがちだと思うんですよね。何か生み出そうとすると、それが衝撃的だったり刺激的だったりするほど「何!?」「なんか物申してきて横柄だな」と反発してくる人も多いんだと思います。だからこそ横柄と言われるぐらい頑張りたい気持ちはありますね。

――佐野さんは歌詞の第一印象はいかがでしたか。

佐野思いも寄らぬ方向から剛速球が来たなと感じました。自分の想像力には限界があるので、自分が想像したものが来たときはたいていうまくいかない。今回のように想像を超えたところから球が来ると、人間の可能性のすごさを改めて痛感させられます。最初の衝撃の時点で「早く完成させてほしい」「誰よりも先に聴きたい」と思ってしまいました(笑)。

――具体的にはどのようなところでしょうか。

佐野このドラマを作り始めるとき、いろいろな政治の本を読んだ中で、政治学者のカール・シュミットが「政治の本質は友と敵を区別すること」と言っていて。良いことと悪いこと、悪と正義に分けることと、友と敵に分けることは似て非なるものだなと。誰も悪い人がいなくてもやっぱり敵はいるわけで、特に選挙は最たるものだと思います。だからこそ、“腐敗した政権”とかわかりやすい言葉でいわゆる“悪”を作りたくないと思っていたので、浜野さんが汲み取ってくださったのはありがたい限りです。

後藤真希の底知れぬポテンシャルに驚愕 オープニングの変化に隠された意図とは?

後藤真希

後藤真希

――主題歌は後藤真希さんとのコラボレーションになっています。どのような経緯で実現したのでしょうか?

佐野茉莉とあかりという違う世界にいた2人が出会ってタッグを組んで進んでいくストーリーなので、主題歌も異色の組み合わせがいいなと。しかも「浜野さんとこんな人が」という組み合わせにしたくて、私は後藤さんのことをずっと見てきた世代ですし、最近のご活躍も拝見している中でのお願いとなりました。

――浜野さんは後藤さんとコラボしてみていかがでしたか。レコーディングの様子なども聞かせてください。
浜野坂東さんも感じていたみたいですが、こっちが要求すればするほど出てくるのがすごいなと感じました。求めたことに対して毎回100点以上をスッと返してくれる。だからもっとゴマキを引き出さなければ、新しい何かを要求しなければと、坂東さんとそわそわしていました(苦笑)。

――クオリティを上げたら向こうがさらにまた上げて返してくるというのはハイレベルな現場ですね。オープニング映像では、話数が進むごとに出演キャストが増えていくのが話題になっています。松下洸平さんが出続けていることもあり、さまざまな考察ができそうですが、当初から思い描いていたのでしょうか。

佐野ドラマの構成も前半は仲間集めで、後半は仲間たちと選挙を戦っていくという物語なので、変え方はともかく、参加者を変えたいというのは構想していました。踊っているメンバーについては、最終回まで観ていただいたらきっと腑に落ちるだろうし、なるほどと思っていただけるのでは。そこまで考えて始めたわけではありませんが、展開的にいい具合にマッチしたと思っています。

最終回はスタッフ内でも賛否両論

――いよいよクライマックス間近ですが、最終回の着地点は当初から想定した通りになるのでしょうか。

佐野終わり方に関しては当初から大きく3つぐらいの可能性があって、そのどれになるかは決めずに走っていました。ただ最初から脚本の蛭田(直美)さんとは暫定というか、この終わり方なのではと話していたものに最終的にはなりました。途中で違う方向に行きかけもしましたが、形は変えてはいるものの、大きな流れで言うと当初の予定に戻った感じです。

――難しいでしょうが最終話に向けての注目ポイントを教えてください。

佐野ちゃんとたためるかはずっと不安でしたが、最終的にはこの形になって良かったです。登場人物がみんなきちんと描かれているので、誰かに注目するのも難しいですけど、日山流星(松下洸平)の秘書の昴(倉悠貴)が好きなので個人的ポイントにはなるかも(笑)。茉莉とあかりのコンビもありつつ、流星と昴の支え合いもいい。流星に昴がいて良かったと最後は思いました。本筋を描く上で切り捨てがちな部分も、尺がなくても諦めないのは蛭田さんの優しさだと思います。ドラマの主張と違うことを脚本上でもやってはいけないと意識されていて、そこに今回大きな学びがあったし、そういう最終回になっていると思います。

浜野わかりやすさや尺の関係でシェイプアップされがちですけど、細かく詰めれば詰めるほど視聴者は集中するというか。どんなに地味でも細かくても一人一人のキャラクターが大事にされていると、視聴者はどんどん前のめりになっていく気がします。

――ドラマを観終えた後、選挙や政治に興味を持つ人が一人でも増えるといいですよね。

佐野そうですね。選挙ボランティアに行ってみようかなというSNSの書き込みを見かけたのですが、それだけでやって良かったと思っています。あとは何を言われても皆さんの感想なので大丈夫かと(笑)。

――改めて最終回に向けてメッセージをお願いします。

浜野最終回までちゃんと「おーへい」という曲がドラマに馴染むかどうか心配ではあります(笑)。この物語の素晴らしさに勢いあまって突っ走っちゃったけど、そのパワーとドラマ上のパワーが合致して歌詞の意味合いが皆さんに届けばうれしいです。愛で作りました!

佐野何を言ってもネタバレになっちゃうし、私の言葉で何らかのイメージを持たせてしまうと、物語を純粋に楽しめなくなってもったいないです。あえて言うなら、きっと誰も予想していない最終回になっていると思います。それすら何かの誘導になっている気がしますけど(苦笑)。スタッフの中でも最終回は意見が分かれましたが、それは素晴らしいことだと思います。それぞれの思いを乗せてくれているからこそ賛否両論になるのだろうと。ぜひ皆さんからのいろんな意見を教えてほしいです!

取材・文:遠藤政樹

■ドラマ『銀河の一票』オリジナル・サウンドトラック
品番:COCP-42695/価格:3500円(税込)
収録曲
1.銀河の一票 ファンファーレ
2.銀河の一票 メインテーマ
3.おーへい *主題歌
4.会談
5.嘘
6.あなたの星
7.星空
8.リング
9.東京モデル
10. きれいなこと
11. コインランドリー
12. 星が見えない
13. 念のため
14. 明るい方へ
15. 銀河の一票 ファンファーレ Part 2
16. 弁えなさい
17. 正しく、強く
18. 対話
19. はんぶんこ
20. ブライトブラインド
21. 全体のしあわせ
22. 銀河の一票 ファンファーレ Part 3
23. 銀河の一票 ファンファーレ Part 4
24. 銀河の一票 メインテーマ -Short ver.-
*主題歌:浜野謙太&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代
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